「なんで自分の歌だけ、こんなに不快な音が入るんだろう?」
録音した歌声を聞き返したときに、「ペチャッ」「ピチャッ」といった音が気になって検索された方も多いのではないでしょうか。
このような口の音は「リップノイズ」と呼ばれ、歌うことが好きな人や「歌ってみた」を投稿している人でも悩むことがある症状です。
水を飲めば改善するのか、あるいはマイクが悪いのかなど疑問に思うかもしれません。
しかし、リップノイズは口の乾燥や歌い方だけでなく、舌や唇の使い方、発声のクセなどが影響している可能性があります。
この記事では、リップノイズの原因やすぐに実践できる対処法とトレーニングについて詳しく解説します。
リップノイズを減らし、よりクリアで聴きやすい歌声を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事のコンテンツ
リップノイズとは?

リップノイズとは、話したり歌ったりするときに発生する「ペチャッ」「ピチャッ」「チュッ」といった口の中の雑音のことです。
唇や舌が離れる際や、口内の唾液が動く際に生じる音で、マイクが近い環境では特に目立ちやすくなります。
普段の会話では気にならなくても、歌を録音したり動画を撮影したりする際にマイクが近くなり、リップノイズがはっきりと記録されてしまうのです。
そのため、リップノイズを知らない状態で自分の歌声やナレーションを聞き返した際に、口の音が気になってしまう方が多いのでしょう。
リップノイズ自体は誰にでも起こる現象ですが、口内の乾燥や発声時の口の動かし方などによって発生のしやすさは個人差があります。
適切なケアや発声方法を身につけることで、リップノイズを軽減できる可能性があります。
リップノイズが起こる仕組み

リップノイズは、口内の唾液と粘膜が唇や舌の動きによって引き離された際に発生します。
特に口の中が乾燥している状態だと唾液の粘度が高くなり、唇や舌がくっつきやすくなることで、リップノイズの音が発生しやすいです。
リップノイズの仕組みを知りたい場合、以下の方法で確認できます。
- 口を大きく開けて口呼吸を10秒行う
- そのままの状態で舌を上顎につける
- 下を上顎から素早く引き離す
マイクは人の耳では気にならないほど小さな音まで拾うので、録音した音声ではリップノイズが目立つことがあります。
歌っている最中は気付かなくても、録音を聞き返して初めてリップノイズに気付くケースも珍しくないでしょう。
リップノイズとポップノイズの違い

リップノイズとポップノイズはどちらも録音時に気になる雑音ですが、発生する原因が異なります。
リップノイズは、唇や舌、唾液など口の中の動きによって生じる音です。
一方、ポップノイズは「パ」「バ」など破裂音を発音した際に強い息がマイクへ直接当たり、「ボフッ」という低い雑音として録音される現象を指します。
つまり、リップノイズは口内の動きが原因であり、ポップノイズは息の勢いが原因という違いがあります。
どちらもノイズと呼ばれている以上、聴く側が不快に感じてしまう音の一種と言えるでしょう。
リップノイズが起こる原因

リップノイズは、口の中や唇の状態、発声時の動きなど、さまざまな要因が重なって発生します。
まずは、自分がどの原因に当てはまるのかを知ることが、リップノイズを改善する第一歩です。
では、リップノイズが起こる主な原因をご紹介します。
唾液が多い
唾液の量が多いと、唇や舌が動くたびに唾液が引き伸ばされたり離れたりするので、リップノイズが発生しやすくなります。
特に、食後などは唾液の分泌量が増え、一時的にリップノイズが目立つこともあります。
一般的には緊張すると口が乾くと言われていますが、中にはかえって唾液量が多くなってしまう方もおり、こちらも同様にリップノイズの原因となるでしょう。
口内が乾燥している
意外に思われるかもしれませんが、口内の乾燥もリップノイズの原因の一つです。
口の中が乾燥すると、口内の保護を目的とした粘性の唾液が分泌されやすくなります。
そうなると、舌や唇、口内の粘膜がくっつきやすくなり、口を開閉したり発音したりする際に、リップノイズが発生しやすくなるのです。
特に以下の環境下では、口内乾燥によってリップノイズが起こる可能性が高まります。
- 長時間歌った・話した後
- エアコンが効いた室内
- 緊張やストレスのある状態
「唾液の量が多すぎても口内が乾燥しすぎてもダメ」という厳しい条件を言われている気がしてしまいますが、この後紹介する対処法を知っていれば緩和できるので安心してください。
唇の乾燥・ベタつき
唇が乾燥している場合も、リップノイズが発生しやすくなります。
唇の皮がむけた状態まで乾燥していると、硬化した皮膚が擦れ合った際に音が出てしまうからです。
そのため、唇が乾燥している際のリップノイズは「ピチャッ」という音よりは「パッ」「カサッ」といった乾いた音が入ります。
逆に、リップクリームを塗りすぎるなどして唇がベタついている場合も注意が必要です
唇同士が必要以上に密着すると、唇を離す際に音が発生しやすくなります。
発声方法・口の動かし方
リップノイズは、口内の状態だけでなく、発声方法や口の動かし方が影響していることもあります。
例えば、歌うときに口や舌へ必要以上に力が入っていると、唇や舌の動きがぎこちなくなり、リップノイズが発生しやすくなるでしょう。
また、口を十分に開けずに発声していると、口の中で舌や唇が触れ合う機会が増えてしまいます。
自己流で歌っていると、自分では正しく発声できているつもりでも、無意識のうちに口の動きや発声にクセがついているケースも珍しくありません。
水分補給や口内の乾燥対策をしてもリップノイズが出る場合は、発声方法を見直すことで改善できる可能性があるでしょう。
すぐにできる!リップノイズの対処法

リップノイズを改善するには、口内の乾燥を防ぎつつ、唇や舌の動きをスムーズにする方法を用いるのが大切です。
ここでは、歌う前や録音前にすぐ実践できるリップノイズの対処法を紹介します。
水分補給する
簡単にできるリップノイズ対策としてあげられるのが水分補給です。
口内が乾燥すると唾液が粘つきやすくなり、唇や舌が動く際に音が発生しやすくなります。
歌う前や録音前に少量ずつ水を飲み、口の中を適度に潤しておくことで、リップノイズを軽減できる可能性があります。
喉を潤すこともできるので、リップノイズ対策とあわせてこまめな水分補給を意識しましょう。
歯を磨く
音声収録前に歯磨きするのもリップノイズ対策の1つです。
口の中に食べカスや余分な汚れが残っていると、細菌が繁殖して粘性のある唾液になりやすいです。
特に収録中は口内が乾燥しやすいので、汚れた状態でいるよりは、歯磨きでキレイにしてあげたほうがベタつきは抑えられるでしょう。
歯磨きをすると口の中がすっきりするため、発声前に気持ちを切り替える準備として取り入れるのもおすすめです。
リップクリームを塗る
唇の乾燥が原因でリップノイズが発生している場合は、リップクリームでの保湿が効果的です。
唇が乾燥すると、めくれた皮が引っかかり、開閉する際に音が出やすくなります。
本来であれば、唇が乾燥しないように事前にリップクリームで保湿するのが望ましいです。
もし収録前に唇が乾燥していたとしても、適度にリップクリームを塗れば、乾燥によるリップノイズを防げる可能性があります。
注意したいのが、乾燥を防ぐためにリップクリームを塗りすぎてしまい、かえってベタついてしまう点です。
唇のベタつきによるリップノイズを防ぐために、リップクリームは薄くなじませる程度に止めて使用しましょう。
リラックスする
リラックスして音声収録に臨むのも、立派な対策です。
緊張によって口周りに力が入ると、唇や舌がくっつき、音が出やすくなってしまいます。
特に歌う前や人前で話す場面では、無意識に唇や舌へ力が入り、口の動きが硬くなりやすいです。
その結果、発音がスムーズにできず、リップノイズが目立ってしまうこともあるでしょう。
緊張がほぐれるように深呼吸をしたり、軽く口周りの筋肉をほぐしたりして、自然な状態で発声できるように意識するのが大切です。
空腹を避ける
意外に思われがちですが、空腹を避けておくのもリップノイズ対策としてあげられます。
空腹を避ける理由は、食事をしていない状態が続くと唾液の分泌量が減り、口内が乾燥しやすくなるからです。
特に長時間の音声収録を行う場合は、事前に食事を済ませておき、空腹にならないよう意識しましょう。
ただし、直前に食べ過ぎると発声しづらくなるので逆にNGです。
できれば3時間前に食事を済ませておき、どうしても音声収録直前になってしまう場合にはゼリーなどの軽食で済ませるようにしましょう。
ボイストレーニングを行う
乾燥対策などを行ってもリップノイズが繰り返し起こる場合は、発声方法や口の使い方を見直すと良いかもしれません。
実際に、当スクールのNAYUTAS(ナユタス)でも、リップノイズが起こりやすい生徒さんに対して口の使い方を指導し、改善できた事例があります。
また、ボイストレーニングを通して口周りの筋肉を鍛えることでも、リップノイズが軽減できる可能性があります。
歌う際に口や舌へ余計な力が入っている、正しい息の使い方ができていないといったクセは、独学だけでは自覚しにくいです。
そのため、ボイストレーニングを通して、自分では気付きにくい発声のクセを確認してもらい、リップノイズの少ない声の出し方や口の動かし方を学ぶのも解決法の1つと言えるでしょう。
水分補給や保湿をしてもリップノイズが改善しない、録音した自分の声をもっときれいにしたいという方は、プロの指導を受けながら発声を見直すことを視野に入れてみてください。
ガムを噛む
歌う前にガムを噛むことで、唾液の分泌を促す効果が期待でき、口内の乾燥によるリップノイズを軽減できます。
また、ガムを食べる行為は側頭筋(こめかみ上あたりの筋肉)と咬筋(えらあたりの筋肉)を刺激してくれるので、声の響きや出しやすさにも良い影響を与えてくれます。
ただし、ガムを用いる際は以下の点に注意してください。
- 無糖のガムを用いる:果糖は粘性の唾液を作りやすくなる
- 歌う前に吐き出しておく:唾液量が増えすぎてリップノイズが起こる
- ガムだけに頼らない:ガムを噛む以外にも口周りの筋肉をほぐすマッサージや準備を行う
上記をふまえた上で、ガムを適切に使い、リップノイズを軽減させていきましょう。
鼻呼吸を意識する
鼻呼吸を意識すると、口内の乾燥を防ぎリップノイズをしにくくできます。
普段から口呼吸をしている場合、口内の水分が失われやすく、粘性の唾液が分泌されてリップノイズが起こりやすいです。
即効性は期待できないものの、鼻呼吸を習慣化することで、口内環境を整えてあげられるでしょう。
また、鼻呼吸は発声時の呼吸コントロールにも関係します。
歌う際に安定した息の流れを作るためにも、普段から正しい呼吸を意識することが大切です。
リップノイズを抑えるためのトレーニング方法

水分補給や口内環境を整えることで、一時的にリップノイズの軽減ができます。
しかし、それでもリップノイズが気になる場合は、口周りの筋肉や舌の使い方、呼吸方法などの見直しが必要です。
そこで、ここでは自宅でも取り組みやすいリップノイズを低減するトレーニング方法を紹介します。
口周りの筋肉をほぐす
口周りの筋肉が硬くなっていると、唇や舌の動きがスムーズにいかず、リップノイズが発生しやすくなります。
運動前のウォーミングアップと同様に、口周りの筋肉をほぐしてあげるのがおすすめです。
リップノイズ対策として最適なトレーニングは、以下の3種類です。
- リップロール:唇を閉じながら息を吐いてブルブルと震わせるトレーニング
- タングトリル:舌を上の歯の裏側に置き、下を震わせるトレーニング
- 表情筋トレーニング:口を大きく開けて「あ・い・う・え・お」と動かす、頬や口角を軽くマッサージする
上記のトレーニングをウォーミングアップとして数分取り入れるだけでも、口周りの動きがスムーズになり、リップノイズが入りにくくなるでしょう。
唾液の分泌を減らす発声方法
リップノイズを防ぐには、唾液を無理に減らそうとするのではなく、口の中に余分な唾液がたまりにくい発声の意識も重要です。
例えば、歌う前に不要な唾液を飲み込み、口内を整えてから発声するだけでも、リップノイズを抑えやすくなります。
また、口や舌に余計な力を入れず、息を自然に流すように声を出すことで、唇や舌のの動きがスムーズになり、雑音の発生を軽減できる場合があります。
力任せに発声するのではなく、リラックスした状態で声を出すことを意識してみましょう。
舌を脱力させるトレーニング
リップノイズを抑えるには、舌を脱力させるトレーニングもおすすめです。
まずは以下の方法で、舌の脱力を確認してください。
・口を軽く開ける
・舌先を下唇の上に軽く置く
・その状態で力を入れずに「あー」と発声する
舌が脱力していても、声が出せることに気づくはずです。
続いて、先ほどと同じく下唇の上に舌を置き、「まー」と発声してください。
このとき、舌が引っ込む人は力が入っている証拠です。
舌が引っ込まないような発声法ができたら、低い声・高い声でもできるように練習していきましょう。
腹式呼吸の習得
歌うときの呼吸が浅いと、喉や口周りに余計な力が入り、摩擦が増えることで雑音が生まれやすくなります。
腹式呼吸は、お腹を膨らませながら鼻から息を吸い、ゆっくりと口から息を吐く方法です。
息を安定してコントロールできるようになると、喉や口周りに不必要に力を入れなくなり、自然な発声ができるでしょう。
腹式呼吸はリップノイズ対策だけでなく、声量や音程の安定、長いフレーズを歌いやすくするといったメリットも期待できます。
自己流では力みやクセに気付きにくい場合もあるので、正しい腹式呼吸や発声方法を身につけたい方は、ボイストレーニングでプロのアドバイスを受けることもおすすめです。
リップノイズの除去に役立つ機材

リップノイズは発声方法や口内環境の見直しが基本ですが、用いる録音機材によってノイズを目立ちにくくできる場合もあります。
ここでは、歌やナレーションの録音時に役立つ機材を紹介します。
ポップガード
ポップガードは、マイクの前に設置するメッシュ状のアクセサリーで、「パ」「バ」などの破裂音によるポップノイズを軽減するための機材です。
リップノイズそのものを完全に防げるわけではありませんが、息が直接マイクに当たるのを防ぐことで、不要な雑音を抑えられる場合があります。
また、マイクとの適切な距離を保ちやすくなるので、リップノイズ音を拾ってしまうのを軽減できるでしょう。
歌ってみた動画や自宅録音を行う機会が多い方は、ポップガードを用意しておくのがおすすめです。
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクは、繊細な音まで高精度で収音できるため、ボーカルレコーディングや配信などで広く使用されています。
一方で、小さな音まで拾いやすいという特徴があり、近い距離で録音するとリップノイズも目立ちやすくなるので注意が必要です。
そのため、リップノイズを防ぐ場合には、コンデンサーマイクから距離を離して大きな声で歌うのが良いでしょう。
大きな声で録音すると、仮にリップノイズが気になったとしても、マイクの音量を下げれば相対的に小さくなります。
距離を離していると、そもそもリップノイズが入りにくくなるので、コンデンサーマイクの良さを活かすことができます。
リップノイズに関するよくある質問

ここでは、リップノイズについてよく寄せられる質問にお答えします。
Q1.リップノイズは完全になくせますか?
リップノイズを完全になくすことは難しいです。
リップノイズは、唇や舌の動き、唾液の状態などによって自然に発生する音であり、誰にでも起こり得るものだからです。
そのため、完全にゼロにすることを目指すよりも、録音や歌唱時に気にならないレベルまで抑えることを目標にすると良いでしょう。
Q2.リップノイズはマイクを変えれば改善しますか?
マイクを変えることでリップノイズが目立ちにくくなる場合はありますが、根本的な解決にはつながらないことがほとんどです。
高性能なコンデンサーマイクは小さな音まで拾いやすいため、リップノイズが強調されることがあります。
一方で、マイクとの距離や角度を調整したり、録音環境を見直したりすることで、雑音を軽減できる場合もあります。
しかし、リップノイズの原因が口内の乾燥や発声方法にある場合は、機材だけを変えても改善は難しいでしょう。
録音環境を整えることに加えて、正しい発声方法や口の動かし方を身につけ、よりクリアで聞き取りやすい声を録るよう意識してみてください。
まとめ
今回は、リップノイズとは何か原因や対処法についてご紹介しました。
発声する際に、「ペチャッ」「ピチャッ」という音がしてしまうのがリップノイズで、口内の環境が原因であり、水分補給などで整えることが即効性のある対処法だと理解してもらえたはずです。
しかし、対処をしても直らない場合には、あなたの声の出し方や舌の使い方が上手くできていない可能性が考えられます。
もし、自分のクセを把握できない場合は、ボイストレーニングを通じて改善を目指すほうが効率的です。
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