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相対音感をわかりやすく解説!特徴やトレーニング方法も紹介

音楽をより深く楽しむために、相対音感という能力が重要であることはご存じでしょうか。この音感は、特定の基準となる音を基に、他の音との関係性を判断する能力で、多くの人が潜在的に持っているとされています。

相対音感は、性別や年齢に関わらず、トレーニングによって習得および向上させることが可能です。本記事では、相対音感の基本的な知識から、それを身につけるメリット、そして具体的なトレーニング方法まで、わかりやすく解説します。

  • 音楽に対する理解度を上げたい
  • 音階を正確に捉えられるようになりたい
  • 絶対音感に似たスキルを身に付けたい

上記に当てはまる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

相対音感とは


相対音感とは、基準となる音を聞いた上で、別の音がその基準音と比べてどのくらい高いか低いか、すなわち音程を判断できる能力を指します。

例えば、「ド」の音を聞いた後に「ファ」や「ソ」の音を聞き分けられるのは、この相対音感の働きによるものです。カラオケで伴奏に合わせて音程をとりながら歌うことも、相対音感の一例といえるでしょう。

相対音感は多くの人が潜在的に持っている能力ですが、活用しないまま成長することで失われていくものです。反対に、相対音感はトレーニングによってその精度を高めることができます。

歌や楽器を上達させたいと考えるなら、相対音感を向上させる練習を積極的に行うことが効果的です。

相対音感と絶対音感の違いとは


相相対音感と絶対音感は、音の聞き分け方と習得できる年齢に明確な違いがあります。絶対音感は音を聞いた瞬間にその音を単独で何の音か判断できる能力である一方、相対音感は、ある基準音をもとに他の音との音程差を判断する能力です。

絶対音感は、生まれつきの才能や幼少期の特別な訓練によって習得されることが多く、大人になってからの習得は困難であるとされています。一般的に、絶対音感を身につけるための「臨界期」は6歳未満と言われており、それまでに訓練を行うことが重要だと考えられています。例えば、5歳児の90%以上が習得できたのに対し、6歳児では約50%以下という報告もありますが、具体的な習得率は研究によって幅があり、一概に80%という数値が明確に示されているわけではありません。2歳から3歳で練習を始めるのが最も良いとされています。

対して相対音感は、誰もが潜在的に持っている能力であり、大人になってからでもトレーニングを積むことで習得・向上させることが可能です

相対音感の特徴


続いては、相対音感の特徴について詳しく解説します。

基準音から音階を判断できる

相対音感を持つ人は、提示された基準音をもとに、他の音の音階を正確に判断できます。例えば、ある音を「ド」と認識できれば、次に鳴る音が「ミ」であれば、それは「ド」から長3度上の音だと理解できる能力です。

この能力は、耳で聞いた音楽を「ドレミ」といった音階で認識する際に役立ち、楽譜がなくてもメロディーを再現したり歌を歌ったりできる能力とも言えます。

合唱などで用いる「移動ド唱法」は、相対音感を育てるための歌唱法のひとつであり、ハ長調で「ド」から始まる曲をト長調で「ソ」から歌う場合でも、音の読み方を変えずに「ド」として歌うことで、相対的な音程感覚を養うことができます。初心者にはなかなか理解し難い歌唱法ですが、実は学校教育でも移動ド唱法は音楽の授業などで取り入れられており、私達も知らないうちに相対音感を育てられているのです。

このように、基準音との関係性を理解することで、調性に縛られずに音楽を柔軟に捉えることが可能になります

音楽の構成を理解できる

相対音感を身につけることで、音楽の構成をより深く理解できるようになります。
メロディーやコード進行を音の流れとして記憶し、把握できるため、楽譜なしに歌を覚えたり、コード進行を頭の中で理解したりすることが容易になります
相対音感によってメロディーやコード進行に対する理解が深まると、初めて聴く曲でも今後の展開を予測しやすくなり、覚えるまでの時間も短縮できるでしょう。

また、和音を構成する一つひとつの音を聴き分けるだけでなく、音の響きの特徴を捉えることで、ハーモニーや伴奏から自分のメロディーを素早く理解できるようになります。
コードが調やそこから導き出される複数のコードによって組み立てられていることを理解し、コード進行への理解を深めることは、音楽を体系的に理解する上で大きなメリットとなります。

トレーニングで習得できる

相対音感は、トレーニングによって後天的に習得できる能力です。
幼少期の訓練が有利である絶対音感とは異なり、相対音感は年齢に関係なく強化できるという特徴があります。多くの人が潜在的にこの能力を持っているため、意識的に鍛えることで実用的に使えるようになるでしょう

相対音感を鍛えることは、歌唱力アップにもつながるため、歌が上手になりたい方にもおすすめです。

相対音感は大人になってからでも身に付けられる


絶対音感は生まれもった才能だと聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。古くから、絶対音感は先天的な才能であると考えられていましたが、近年の研究では幼少期からの訓練によって絶対音感の習得が可能ということが分かってきました。

一方で、大人になってから絶対音感を身に付けるトレーニングをしても効果は薄いことが指摘されています

絶対音感に対して相対音感は、大人になってからでも十分に身につけることが可能です。絶対音感が幼少期の訓練に大きく依存するのに対し、相対音感は誰にでも備わっている能力であり、意識的なトレーニングによってその精度を高めることができます。

音感がないと感じている人も、これまでに音感を使ったりトレーニングしたりする機会が少なかっただけであり、年齢に関係なくいつからでも鍛え始めることができます。

相対音感を鍛えるトレーニングを実践するなかで、耳コピや和音感覚を身につけるための楽譜を読む力が必要になるなど、音楽の総合的な知識や技術が習得できる点にも注目が集まっています。歌や楽器を上達させたい場合に、相対音感の向上トレーニングが推奨されるのは、音楽を総合的に学ぶことができるからです。

実際に、当スクールでもボイストレーニングを受けるなかで相対音感を向上させている方がたくさんいらっしゃいます。学生さんに限らず、社会人の方などでもトレーニングを経て相対音感を身に付けている方が多くいるため、トレーニングを始める年齢に制限がないことが証明されています。

相対音感を鍛える5つのメリット


相対音感を鍛えることには、音楽をより深く楽しむための多くのメリットがあります。
続いては、相対音感を鍛えることで得られる5つのメリットについて詳しく解説します。

メリット1.音程を正確に捉えられるようになる

相対音感を鍛えることで、音程を正確に捉える能力が向上します。これは、歌唱力の向上に直結する重要なメリットです。

正しいピッチを意識しながら歌う練習を日常的に行うことで、頭の中に正しい音程が鳴るようになり、自分のピッチ感に頼れるようになります。

音の高低差がわかるようになるため、曲の主旋律に対してどのくらいの高さで歌ったらバランスが良いかを的確に判断できるようになります。

メリット2.転調が得意になる

相対音感を身につけると、転調が簡単にできるようになるメリットがあります。相対音感は音と音の距離を把握する能力であるため、曲の途中でキーが変わる転調があっても、スムーズに対応することが可能です

例えば、カラオケでキーを上げたり下げたりする際に迷うことなく歌いこなせるのは、相対音感があるおかげです。バンドなどでセッションを行う場合でも、即座に転調に対応できるスキルが求められることがありますが、相対音感があれば、音同士の距離を認識しているため瞬時に対応できます。

これは、絶対音感にはない、相対音感ならではの大きなメリットといえるでしょう

メリット3.ハーモニーに対する理解が深まる

相対音感を鍛えることで、ハーモニー(和音)に対する理解が深まります。
音を聴き分ける能力が向上すると、ハーモニーや伴奏から自分のメロディーをすぐに理解できるようになります。
さらに和音感覚を鍛えると、曲のキーに合った正しい高さの音が出せるようになります。

ハーモニーに対する理解が深まることで、和音に対して自分が発声すべき音を的確に理解できるようになるため、ハモりが上手くなることもメリットのひとつといえるでしょう

メリット4.メロディーやコードに対する理解が深まる

相対音感を身につけることで、メロディーやコード進行などを音の流れとして記憶できるようになり、音楽に対する理解が深まります。
歌を覚えるような感覚で楽譜を覚えられたり、コード進行を把握できたりするため、耳コピでの演奏がしやすくなることもメリットです

初めて聞く曲やコード進行においても、今後の展開を予測しやすくなり、覚えるまでの時間が短縮されます。
コードは、調とそこから導き出される複数のコードによって組み立てられているため、相対音感を身につけてコード進行の理解を深めることは、音楽を深く理解し、曲を体系的に管理する上でも役立つでしょう。

ヴォーカルや楽器演奏者にとって「曲を早く覚える」という能力は、必要不可欠なスキルといえます。曲を覚える時間を短縮できれば、その分楽曲のクオリティを上げる練習に時間を費やすことができるからです。

メリット5.作曲や編曲がしやすくなる

相対音感は、作曲や編曲をしたい方、またはその能力を向上させたい方にとって身につけておきたい能力です。

作曲では、メロディーを作る際に音程がどのように移り変わるかを決めることが重要であり、最初の音を基準として音程の上下を繰り返しながら曲が完成していきます。そのため、相対的な音の違いを分析・判断できる相対音感があることで、作曲がよりスムーズに進められます

編曲においても、アドリブで演奏できる能力が向上することで、作曲や演奏力の向上にもつながるでしょう

相対音感は、音の構造を理解し、それを応用する能力を高めるため、音楽制作において非常に役立つと言えます。

大人からでも間に合う!相対音感を鍛える効果的なトレーニング方法


大人になってからでも、相対音感を鍛えることは十分に可能です。効果的な相対音感の練習方法を継続することで、音楽を聴き取る力や表現する力が向上し、より豊かな音楽体験ができるようになります。

今回紹介する方法は、誰でも気軽に始められる相対音感を鍛える効果的なトレーニング方法です。相対音感を鍛えたい方はぜひ毎日のトレーニングにここで紹介する方法を取り入れてみてください。

日常的に楽器に触れる習慣をつける

相対音感を鍛える上で、日常的に楽器に触れる習慣をつけることは非常に効果的です。
ピアノやギター、ベースなど、音名のある音が出せる楽器を演奏することで、音程への理解が深まります。

楽器で弾いた音と同じ音を声に出して発声する練習もおすすめです。
例えば、ギターで「ファ」の音を出したら、声でも「ファ」と発声し、楽器の音と自分の声を紐づける訓練をします。
また、基準音を決めて1オクターブの上り下りを繰り返す練習も効果的です。
例えば「ド」を基準音として、「ドレドミ」というように音を出し、慣れてきたら反対の順番で音を出してみましょう。

短い時間でも毎日継続して楽器を弾いたり歌ったりすることで、耳と身体が音に慣れていきます。

ハモリで和音感覚を強化する

ハモリの練習は、和音感覚を強化し、相対音感を鍛える上で非常に効果的な方法です。
メインパートのメロディーに合わせて、下パートや上パートのメロディーを演奏したり歌ったりする「ハモリ」には、精度の高い相対音感が必要となります。

曲から聞こえるメイン以外のパートに耳を傾けながら、メインパートのメロディーに対してハモれるようになる練習をしてみましょう。
音を聴き分ける能力が向上すると、ハーモニーや伴奏から自分のメロディーがすぐに理解できるようになり、さらに和音感覚を鍛えることで、曲のキーに合った正しい高さの音が出せるようになります。

アカペラコーラスのハーモニーを聴いて、メロディーを歌うことも、和音感覚を鍛えるのに効果的です。

好きな曲を聴いてメロディーを再現する(耳コピ)

好きな曲を聴いてメロディーを再現する、いわゆる「耳コピ」は、相対音感を鍛えるのに非常に効果的なトレーニング方法です。
楽譜を使わずに音楽を聞き取り、それを演奏や歌で再現する耳コピは、音を聞き取るインプット能力と、それを正確に表現するアウトプット能力の両方を効率良く鍛えることができます。

耳コピを行う際は、まず耳コピしたい曲を歌えるくらいまで繰り返し聞き込みましょう。
次に、歌い始めの音を聞きながら楽器やソフトで基準となる「ド」の音を鳴らし、その基準音をもとにメロディーの音を判断していきます。
聞こえてきた音を判別する際には、それが基準音に対して高いか低いか、合っているかどうかの判断を繰り返すことで、相対音感が鍛えられていきます。

1曲全ての耳コピが終わったら、楽譜と照らし合わせて答え合わせをすると、より効果的です。

複数の音を同時に聴き分ける和音(コード)トレーニング

複数の音を同時に聴き分ける和音(コード)トレーニングは、相対音感を鍛える上で重要な練習です。
このトレーニングによって、単音同士の音程感だけでなく、和音の構成音を聴き分ける力が養われます。
ピアノやギターなど、コードを演奏できる楽器を使って、知っている曲の伴奏の音源から耳コピをしてみるのも良いでしょう。

和音の認識においては、一つひとつの構成音をすべて聴き分ける必要はなく、音の響きの特徴を捉えることが重要になります。
特に、一番低い和音のベースとなる音が、どの調性のどの音名なのかを判別するコツを掴むことが大切です。

コード進行は、和音が曲の進行とともに変化していく流れを掴む感覚が必要になるため、繰り返し聴き、耳で慣れていくことが上達の鍵となります。

ソルフェージュ(視唱)をする

ソルフェージュは視唱とも呼ばれ、相対音感を鍛えるための基礎トレーニングとして非常に効果的です。

ソルフェージュは「音楽の読み書きそろばん」や「音楽の筋トレ」とも形容され、音楽の基礎能力をバランスよく身につけることを目的としています。

視唱では、楽譜に書かれた音符を見て、正しい音程とリズムで歌う練習をします。この訓練を繰り返すことで、旋律と音名をリンクさせられるようになり、音程の理解を深めることができます。

また、音を聞き取る「聴音」や、初めて見る楽譜をすぐに演奏する「初見」などもソルフェージュに含まれ、これらの練習を通して、インプットとアウトプット両方の音感を養うことができます。

日常生活で声を出す時間が取れない場合でも、通勤電車の中で声を出さずにイメージトレーニングをすると効果が期待できるでしょう。

生活の中で聞こえる音の高さに意識を向ける

生活の中で聞こえる音の高さに意識を向けることは、相対音感を自然に鍛える効果的な方法のひとつです。

相対音感は、音楽だけでなく日常生活においても活用されており、友人の声がいつもより高い(低い)と感じたり、カラオケで原曲と違うキーに違和感を持ったりするのも、相対音感の働きによるものです。電話で相手の声の雰囲気が違うと気づくのも、音程や声色の変化を無意識に捉えているからに他なりません。

このように、意識的に周囲の音に耳を傾け、その高さを判断しようとすることで、誰もが持っている潜在的な相対音感を鍛えることができます。
例えば、ドアをノックする音や車のエンジン音など、日常のあらゆる音に意識を向け、その音程や音の変化を注意深く観察してみましょう。

まとめ

相対音感は、基準となる音をもとに他の音との音程差を判断する能力であり、多くの人が潜在的に持ち合わせている音感です。絶対音感とは異なり、大人になってからでもトレーニングによって習得・向上させることが可能です。

相対音感を鍛えることで、音程を正確に捉え、ハモリや転調をスムーズに行えるようになるだけでなく、ハーモニーやメロディー、コードに対する理解が深まり、作曲や編曲といった音楽制作もより容易になります。

楽器に触れる習慣をつけたり、耳コピやソルフェージュを行ったり、生活の中の音に意識を向けたりするなど、様々なトレーニング方法がありますので、ご自身に合った方法で相対音感を鍛え、音楽の世界をさらに豊かなものにしていきましょう。

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