息が続かないのは「肺活量」だけの問題ではない
大好きなアーティストの曲をカラオケで歌っているとき、いちばん盛り上がるサビや、美しく響かせたいロングトーンで「あ、息が苦しい……」と感じたことはありませんか?
フレーズの最後で語尾がフッと消えてしまったり、息継ぎ(ブレス)のたびに慌ててしまってリズムに乗り遅れたり。気持ちよく歌いたいのに、息がもたないせいで不完全燃焼に終わってしまうというお悩みは、実はとても多くの方が抱えているものです。特に女性の場合、「私には肺活量がないから、長いフレーズは歌えないのかも」と諦めてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
でも、少しだけ安心してください。歌っている最中に息が苦しくなる原因は、肺活量の大きさそのものよりも、「息の使い方」や「呼吸のコントロール」にあることが多いのです。
たとえば、こんなご経験はないでしょうか。
・「次のフレーズは長いから、たくさん息を吸わなきゃ!」と意気込んで、肩や胸を大きく持ち上げて力んでしまう。
・歌い出しの最初のひと文字で、吸った息の半分以上を一気にドバッと使ってしまう。
・曲の中でどこで息継ぎをするか決めておらず、苦しくなってから慌てて吸うため、常に酸欠状態になっている。
これらはすべて、日常の会話では起きない「歌ならではの呼吸のクセ」から生まれるものです。たくさんの息を無理に吸い込もうとすると、首回りや肩の筋肉が緊張し、かえって喉が締まってしまいます。その結果、せっかく吸った息がうまく声帯を通り抜けず、無駄に漏れてしまったり、声が細くなってしまったりするのです。
歌に必要なのは、大きな風船を無理やり膨らませるような力ではありません。吸った息を、必要な分だけ、少しずつ一定のスピードで長く吐き出し続ける力です。この「吐く息をコントロールする力」は、特別な筋肉がなくても、毎日のちょっとした意識と練習で少しずつ育てていけるものです。
深く穏やかな呼吸は、歌を安定させるだけでなく、自律神経のバランスを整え、心身をリラックスさせる助けにもなると言われています。呼吸に意識を向ける時間は、忙しい日常の中でふっと自分を取り戻す、マインドフルネスやストレッチのような豊かなひとときにもなるでしょう。
また、これからの秋から冬にかけての季節は空気が乾燥し、喉や気道がとても疲れやすくなります。喉の粘膜が乾燥すると、声帯がスムーズに振動しにくくなり、いつもより息苦しさを感じやすくなることもあります。歌う前はもちろん、普段の生活からこまめに常温のお水で水分補給を行ったり、お部屋を適切に加湿したりして、喉を優しく守ってあげることも、気持ちよく歌うための大切な準備です。
今日からできるブレスコントロール3つの練習
それでは、息を一定に長く保つための「ブレスコントロール」の練習を3つご紹介します。どれもご自宅で、特別な道具なしで始められるメニューです。スポーツのウォーミングアップのような感覚で、リラックスして試してみてください。
1 スーッと一定に吐く
まずは声を出さずに、息の流れだけをコントロールする練習です。
- 肩の力を抜き、リラックスした姿勢で立ちます(または座ります)。
- 鼻から軽く息を吸います。このとき、肩が上に上がらないよう注意しましょう。
- 上の歯と下の歯を軽く合わせ、そのすき間から「スー」という摩擦音を立てながら、細く一定のスピードで息を吐き出します。
- 息が完全に切れるまで、何秒間「スー」をキープできるか測ってみましょう。
途中で息の勢いが強くなったり弱くなったりせず、最後まで同じ音量を保つのがポイントです。吐きながら、おへその下あたり(お腹周り)が風船の空気が抜けるように、ゆっくりとしぼんでいく感覚を意識してみてください。このお腹の動きが、息を支える力につながります。

2 息継ぎの場所を決める(ブレスマーク)
実際の曲を使った実践的な準備です。歌いながら行き当たりばったりで息を吸うと、どうしても呼吸が浅くなりがちです。
- 歌いたい曲の歌詞を紙に書き出すか、歌詞カードを用意します。
- プロの歌手が歌っている音源をよく聴き、どこで息継ぎをしているか確認して「V」などの印(ブレスマーク)を書き込みます。
- 印をつけたところだけで、短く素早く息を吸う練習をします。声は出さず、歌詞を朗読するだけでも構いません。
「ここで吸う」という安心感があると、体は自然とリラックスします。フレーズの長さに合わせて、「次は短いから軽く吸う」「次はサビの長いフレーズだから少し深めに吸う」といったペース配分ができるようになると、歌の安定感はぐっと増していくはずです。
3 声にしてロングトーン
最後に、息に声を乗せる練習です。
- ご自身が一番出しやすい、無理のない高さの音を選びます。
- 鼻から軽く息を吸い、「あー」という声で一定の音量を保ちながら伸ばします。
- 最初の数秒でドカンと大きな声を出さず、細くしなやかな糸を真っ直ぐに伸ばすようなイメージで、最後まで同じ太さ・同じ響きを保ちます。
声が揺れたりかすれたりせずに伸ばせる秒数を、少しずつ伸ばしていきましょう。力んで大きな声を出すよりも、小さな声でも揺らがずにまっすぐ伸ばせることの方が、ブレスコントロールにおいてはずっと大切です。
【練習をするときの注意点】
これらの練習は、それぞれ1日1〜3分程度で十分です。一度に長時間やるよりも、お風呂上がりや寝る前など、リラックスしている時間に毎日少しずつ続けるのが上達のコツです。また、呼吸の練習はやりすぎると頭がクラクラすることがあります。苦しくなるまで無理をして息を吐き切ったりせず、もし少しでもめまいや気分の悪さを感じたら、すぐに練習をストップして休んでくださいね。
一人で難しいところはマンツーマンで確かめよう
ここまで、ご自宅でできるブレスコントロールの練習方法をご紹介してきました。自分の呼吸に意識を向けることで、少しずつ「息の支え」の感覚がつかめてくるかと思います。
ただ、ボイストレーニングにおいて一番難しいのは「自分自身の体の使い方を客観的に見ること」です。鏡を見て気をつけているつもりでも、無意識のうちに肩が上がっていたり、首回りに力が入ってしまっていたりすることは少なくありません。「スー」という息の吐き方一つとっても、力が入りすぎているのか、それとも息が足りていないのか、自分一人では判断に迷うこともあるでしょう。
自分ではなかなか気づきにくい力みや、息の配分のくせ。それらをプロの講師がその場でしっかりと見て、あなたの骨格や声の性質に合わせた具体的なアドバイスをお伝えできるのが、マンツーマンレッスンの最大の良さです。感覚的なものを言葉にするだけでなく、「今、ここの筋肉が硬くなっていますよ」「もう少し息の量を減らしてみましょう」と、目の前で軌道修正をしていくことで、遠回りせずに正しい感覚を身につける助けになります。
ナユタス川越校は、川越駅から徒歩3分という通いやすい場所にあります。周りの目を気にせずご自身の声とじっくり向き合える完全マンツーマンのレッスン形式を採用しており、初心者の方でも安心して自分のペースで学んでいただけます。レッスンは防音室で行い、自習利用も無料なので、「自宅では大きな声で練習できない」という方にもぴったりの環境です。
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