ボイストレーニングの中で、「母音切り」という練習を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
確かに母音切りは、発音を確認したり、リズムを整理したりするためのトレーニングとして使われることがあります。
しかし、私はレッスンの中で、母音切りを常に意識して歌うことはおすすめしていません。
なぜなら、母音切りが癖になってしまうと、歌の流れや声の出し方に悪い影響を与えることがあるからです。
メロディが「ぶつ切り」になってしまう
歌は、一音一音を正確に歌うだけではなく、フレーズ全体を一つの流れとして聴かせることが大切です。
特にバラードでは、息の流れと声のつながりが、そのまま感情表現につながります。
ところが母音を毎回切る癖があると、
一つひとつの音は出ていても、メロディが「ブチッ、ブチッ」と途切れて聞こえてしまいます。
その結果、本来なめらかに流れるはずのフレーズが硬くなり、歌全体がぎこちない印象になります。
アップテンポの曲では気になりにくいこともありますが、バラードでは特に違いがはっきり表れます。
歌は音を並べるものではなく、「線」で聴かせるものです。
喉締めの癖につながることも
もう一つ気を付けたいのが、喉の使い方です。
母音を切るたびに声を止める動きが入ると、そのたびに喉でブレーキをかける癖がつきやすくなります。
これが繰り返されると、
・高音が苦しくなる
・声が引っかかる
・ロングトーンが続かない
・喉が疲れやすい
といった症状につながることがあります。
もちろん全員がそうなるわけではありませんが、もともと喉に力が入りやすい方ほど、この癖が強く出やすい傾向があります。
歌は息の流れを止めずに響かせることが大切です。
必要以上に声を切る動作は、その流れを妨げてしまう原因にもなります。
表現として使うのはアリ
ここまで読むと、「母音切りは悪いものなの?」と思われるかもしれません。
決してそうではありません。
プロの歌手でも、あえて母音を切るような歌い方をする場面はあります。
例えば、
・言葉を強調したいとき
・リズムにアクセントを付けたいとき
・ロックやR&Bなどで独特のニュアンスを出したいとき
など、表現として意図的に使われることがあります。
つまり、「使うこと」が問題なのではなく、「無意識の癖になっていること」が問題なのです。
表現は、自分で選べるからこそ表現になります。
癖になってしまうと、どんな曲でも同じ歌い方になり、表現の幅を狭めてしまいます。
大切なのは、曲に合わせて歌い方を選ぶこと
ボイストレーニングでは、「○○は絶対に正しい」「○○をすれば必ず上手くなる」という話をよく耳にします。
しかし、実際の歌には正解が一つではありません。
バラードではつなげた方が美しい場面もあれば、ロックではあえて切った方がかっこいい場面もあります。
大切なのは、曲や表現に合わせて歌い方を選べることです。
そのためには、まず無意識の癖をなくし、自分でコントロールできる状態を作ることが重要です。
あなたの歌い方は「表現」ですか?それとも「癖」ですか?
レッスンでは、「自分では気づいていなかった癖」が見つかることがよくあります。
母音切りもその一つです。
表現として使っているつもりでも、実はどの曲でも同じように声を切ってしまっているケースは珍しくありません。
NAYUTASの体験レッスンでは、あなたの歌い方を確認し、「表現」と「癖」の違いを一緒に整理しながら、その曲に合った自然な発声を身につけていきます。
歌は、無理に切るものではなく、必要なところで自由にコントロールできるもの。
もし今の歌い方に伸び悩みを感じているなら、一度ご自身の発声を見直してみませんか?

