こんにちは!ナユタス蒲田校でボイストレーニングと話し方を担当しています、咲花莉帆です。
私は今も現役でミュージカルの舞台に立っていますが、いつも思っている事はただひとつ。
「歌もダンスもお芝居もぜーんぶ上手くなりたい!」 【アレもコレもできなくちゃ=挑戦の繰り返し】
ミュージカルの現場では歌にダンス、芝居はもちろんのこと 時には専門的な技術として、殺陣(たて)や、華麗なアクロバットまで、求められるスキルは多岐にわたります。 加えて昨今では歌やダンスのジャンルもどんどん専門的となり、例えばダンスならタップダンスにバレエ、ジャズだけでなくコンテンポラリー、ヒップホップ、リズムタップにジャズコンテに… 元々勉強していてできること、「これは得意です!」というジャンルもあるけれど、初めて出会うものもそれはそれはたくさん出て来ます。 そして元々できていた事でも更に高いスキルを求められ続ける。 ミュージカルに挑み続ける限り「挑戦」は途絶えないのです。
【「できない」は誰にでもやってくる】
これだけ求められる事が多いと当然誰もが「できない」に突き当たります。 「ジャズは得意だけど、バレエは上手くできない」 「この曲のこの高音が出せない」 「初めてやるジャンルのダンスが思うようにできない」 「ダンスはお手のもの!だけど歌はダメなんです」 なんてパターン、その逆のパターンもあります。 何でもできるスーパーマン!みたいな方ばっかりに見える世界ですが それぞれが「初挑戦」を経て「苦手」や「できない」に突き当たり、それを乗り越えて今があるんですよね。 これは私自身も含め、ミュージカルだけでなく表現活動をする者にとって避けて通れないものなんです。 ここで肝心なのはみんなが如何にして「乗り越えて来たか」。 そこには「えーい!やっちゃえ!」でスタートを切っているという共通点がありました。
【挑戦で脳が筋肉に「ロックをかける」瞬間】
人間の脳は本人の意思に関わらず 失敗や危険を本能的に避けるようにプログラムされています。 これは遠い遠い先祖から脈々と受け継がれて来た本能的に命を守るために脳が作ったプログラムで、 今も何か新しいこと、特に自分の能力の限界を超えるかもしれないと感じた瞬間、脳の一部が「警戒信号」を発するようになっています。 この警戒信号により、筋肉への指令系統が制限され筋肉がガチっと強張り臨戦体制に入ってしまった状態 これが、いわゆる“ロックがかかった”状態です。 この状態では、どんなに優れた技術を持っていても筋肉がそのポテンシャルを最大限に発揮することはできません。 声を出そうとすると喉周りの筋肉が締まる。 体を大きく動かそうとすると、関節や四肢が緊張し動きが小さくなる。 セリフを言おうとすると、口周りがこわばる。 これらは迷いや不安、そして「失敗したらどうしよう」という思考で自らの動きを制限してしまっている状態です。 当然の事ながら、そこからは良い結果は生まれてきません。 そしてその結果をみて「やっぱりできなかった…」と更に迷いが生まれてしまうのです。
【「えーい!やっちゃえ!」の魔法】
そこで出てくるのが「えーい!やっちゃえ!」 これは先程の「ロックがかかる」の真逆の状態を目指すためにとっても重要な事です。「 頑張ればできる!」とか「まずは楽しんで!」 といった『根性論』や『気の持ちよう』といった曖昧な精神論ではありません。 「とりあえずやってみよう!」「どうにでもなれ!」と心を解放すると脳の警戒体制が解かれ 私たちの筋肉も余計な緊張から解き放たれ気持ちよく動いてくれます。 本来持っている柔軟性やパワーを、最も自然な形で引き出すことができるこのリラックスした状態こそが、あなたが「こうしたい」と望む表現に体自身が素直に応えてくれる状態なのです。
【「えーい!やっちゃえ!」が上達の近道な理由】
ロックがかかった状態で何かに挑戦した場合、体が思うように動かない、思ったように声が出ない…それでは「こんなはずではなかった」「思うようにできなかった」という曖昧な失敗体験しか得られません。 これは脳が制限した結果であって、自分の実力ではありません。 一方で心を解放して「えーい!」で飛び込んでみた結果はどうでしょうか? 自分の実力を存分に発揮した上での結果ならば不足しているものだけが浮かび上がってきて 「この音域はまだ少し苦しいな」 「このステップで軸がブレるな」といった、具体的な課題が見えてきます。 「とりあえずやってみる」 → 「体が解放された状態で、課題を発見する」 → 「次にやるべきこと(=具体的な練習方法)を見つける」 何事も、いち早くこのサイクルに辿り着くことこそが、上達への最短距離なのです。
【「えーい!」が難しい人のための「下準備」】
しかし、私がそうであるように「えーい!」と勢いよく飛び込むのが苦手なタイプの人もいます。 頭では理解していても不安を完全にゼロにするのは難しいものです。 そんな時は「えーい!」の気持ちになるために 徹底的に下準備をするというのも有効な手段の一つです。
例えば
歌の場合: 歌詞を完璧に覚える。メロディーを把握し、完璧に歌えなくても最低限の土台は固めておく。
ダンスの場合: 振付の映像を何度も見返し、全てのステップの順序と方向を頭に入れておく。 細かい体の使い方は後回しでも、流れだけは分かるようにしておく。
演技の場合: 役の感情やセリフの意図、話の構成といった「心の中」の準備を済ませておく。 準備の中でわからない事や上手くできない事をそのままにせず先生に聞いて、納得してから「えーい!」としてみる事も大切です。 気持ちも身体も「えーい!」と動けるように、知識と準備でサポートする。 これもまた不安を乗り越えてスタートを切るために大切なプロセスです。
【トライした瞬間にもう100点満点】
その準備すらも困難な事も時には出てくるかもしれません。 そんな時は歌もダンスも、いっそのこと「できない」を楽しむくらいの気持ちでスタートしてみてください! そのチャレンジ精神、未知の領域に飛び込もうとする姿勢と勇気。 それだけでもう初めの大きな1歩は踏み出せているのです。 あなたがトライしただけでもう100点満点! あとはその過程で得られた課題を楽しみながら、続けていくだけです。 もし、「上手くできるかな…?」と不安になったら“「えーい!」”の精神を思い出してみてください。 あなたの可能性を制限しているロックは、あなた自身の力で解除できるはずです。 「えーい!」がわからないとき、 「えーい!」の準備がしたい時はお気軽にご相談ください! 一緒に「えーい!」のその先を目指して行きましょう!
ナユタス蒲田校 ボーカル講師 咲花莉帆
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