「喉を開く」という表現は、歌を歌う上で非常に重要な
概念であり、主に以下の二つの側面を指します。
- 喉の奥の空間を広げること(軟口蓋の挙上)
- 喉周辺の筋肉の緊張をなくすこと(リラックス)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 喉の奥の空間を広げること(軟口蓋の挙上)
これは「喉を開く」という言葉が指す、
最も具体的な状態です。
〇どういう状態か: 口の奥、特に口蓋垂(のどちんこ)
の奥にある軟口蓋(口蓋の柔らかい部分)が上がり、
喉の奥の空間が広がる状態を指します。この状態に
なると、口腔内から喉、咽頭にかけての共鳴腔が
最大限に活用され、より豊かで響きのある声が
出せるようになります。
〇なぜ重要か:
・響きのある声: 空間が広がることで、声がそこで
響き渡り、より豊かな倍音を含んだ声になります。
・声量の確保: 喉が締まっていると声の通り道が狭くなり、
声量が落ちますが、開くことでスムーズに声が通り、
無理なく声量を出せるようになります。
・高音の出しやすさ: 喉が閉まっていると、高音を
出す際に無理に力んでしまいがちですが、喉が開いていると
スムーズに声帯が振動し、楽に高音が出せるようになります。
・喉への負担軽減: 喉が締まった状態で歌い続けると、
声帯に余計な負担がかかり、声枯れや喉の痛みの原因に
なります。喉を開くことで、喉への負担が減り、
長時間歌いやすくなります。
〇「喉を開く」感覚を掴む練習方法:
・あくびをする: あくびをする瞬間の喉の奥が広がる
感覚が、「喉が開いている」状態に近いです。
その感覚を意識しながら、声を出してみましょう。
・驚く・息を飲む: 突然驚いた時に「ハッ!」と息を
飲むような瞬間の喉の感覚も参考になります。
・うがいをする: うがいをする時の喉の奥の形も参考に
なります。
・「ン」と発音して鼻腔を意識する: 「ン」とハミング
する際に、軟口蓋を上げて鼻腔に響かせる感覚を意識します。
2. 喉周辺の筋肉の緊張をなくすこと(リラックス)
「喉を開く」は、物理的に空間を広げることだけでなく、
喉やその周辺(首、肩、顎など)の筋肉がリラックス
している状態も含まれます。
・どういう状態か: 喉仏が上がりっぱなしになったり、
首や肩に力が入ったりせず、自然で無理のない状態です。
〇なぜ重要か:
・声帯の自由な動き: 喉周辺の筋肉が緊張していると、
声帯の動きが制限され、本来のパフォーマンスを
発揮できません。リラックスすることで、声帯が自由に
振動し、安定したピッチと声量が出しやすくなります。
・スムーズな息の流れ: 喉が締まっていると、息の
流れが妨げられ、声が詰まったり、息が続かなくなったり
します。リラックスすることで、スムーズな息の流れが
確保され、発声が楽になります。
・「喉の緊張をなくす」練習方法:
・ストレッチ: 首や肩のストレッチを行い、筋肉の緊張を
ほぐします。
・ウォーミングアップ: リップロールやハミングなど、
喉に負担の少ない発声練習で、徐々に喉を温めて
リラックスさせます。
まとめ
「喉を開く」とは、単に喉の奥を広げるだけでなく、
喉周りの筋肉をリラックスさせ、声帯が最も効率的に
機能できる状態を作り出すことを意味します。
この状態をマスターすることで、歌声に豊かな響きと
安定感が生まれ、高音も楽に出せるようになり、
喉への負担も軽減されます。感覚を掴むには時間が
かかりますが、日々の練習で意識し続けることが重要です。