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ボイストレーニング

自分では普通のつもりなのに「声が大きい」と言われる理由|無意識の声量をコントロールする方法

電話を切ったあと、上司に「フロア中に聞こえてたよ」と苦笑いされた。カフェで話していて、はっと顔を上げたら何人かがこちらを見ていた。同僚に手のひらで「まあまあ」と制されたこともある——。

こんにちは、NAYUTAS六本木校です。自分では普通に話しているつもりなのに「声が大きい」と言われてしまう。何度指摘されても、気をつけているうちにまた元に戻る。この悩みは、意識や配慮が足りないから起きているのではありません。原因は、声量という機能の仕組みそのものにあります。この記事では、なぜ自分では気づけないのか、そしてどうすれば場面に応じて調節できるようになるのかを、発声の観点から解説します。

あなたの「音量計」は、最初から狂っている

自分に聞こえる声と相手に聞こえる声の違い|骨導音と気導音の図解

まず前提として、あなたに聞こえている自分の声と、他人に聞こえているあなたの声は、物理的に別物です。

他人があなたの声を聞くとき、音は空気を伝わって耳に届きます(気導音)。ところが自分の声だけは、それに加えて頭蓋骨を振動して直接内耳に届く音(骨導音)が重なります。録音した自分の声に「こんな声だっけ」と違和感を覚えるのは、この骨導音が抜け落ちるからです。

つまりあなたは、生まれてからずっと「自分にしか聞こえない音」を基準に音量を決めてきたことになります。その基準が実際より大きめにズレていれば、本人の感覚では「普通」でも、周囲には「大きい」と届く。何度注意されても直らないのは、根性の問題ではなく、参照している目盛りがそもそも違うからです。

ここが、この悩みのやっかいなところです。自力では、正解の音量が分からない。

声の大きさを決めているのは、性格ではなく「息」と「声帯」

「声が大きいのは生まれつき」「体育会系だったから」と思われている方は多いのですが、声量は体質でも性格でもなく、2つの要素の掛け算で決まる物理現象です。

声量 = 息の量と勢い(呼気圧) × 声帯の閉じ具合

息をたくさん送り込めば声は大きくなります。また、声帯がしっかり閉じている人は、少ない息でも効率よく音に変換できるため、やはり大きな声が出ます。声が大きいと言われる方は、このどちらか、あるいは両方が「よく働きすぎている」状態です。

裏を返せば、どちらも訓練で調整できる変数だということです。生まれ持った声帯の長さや太さは変えられませんが、息の使い方と声帯の使い方は、練習で必ず変わります。

「気をつけよう」では直らない理由

もうひとつ知っておきたいのが、ロンバール効果です。人は周囲の騒音が大きくなると、声を相手に届けるために無意識に音量を上げます。これは意志とは無関係に働く反射なので、「静かにしよう」と思っていても勝手に発動します。

居酒屋やカフェで声が大きくなるのはこのためです。厄介なのは、店内が静かになった瞬間。周囲の音は下がったのに声量だけが上がったまま残り、その一瞬だけ自分の声が浮き上がる。「今の、響いたな」と冷やっとするのは、たいていこのタイミングです。

だからこそ、対策は「気をつける」ではなく、身体の使い方そのものを変えることになります。

やってはいけない、3つの「小さくし方」

方法の前に、先に落とし穴からお伝えします。声を小さくしようとするとき、多くの方が次の3つのうちどれかをやってしまいます。いずれも逆効果です。

声を小さくするときにやってはいけない3つの方法|喉を締める・ささやき声・語尾を落とす

① 喉を締めて音量を落とす

いちばん多いのがこれです。喉を狭めれば確かに音は小さくなりますが、同時に声がこもって不明瞭になります。すると相手に聞き返され、結局もう一度大きな声で言い直すことになる。音量を下げたのに、トータルではむしろ響いてしまうという悪循環です。

加えて、締めた状態での発声は喉への負担が大きく、長く続けると声の枯れにつながります。(声が枯れやすい人必見!正しい発声で喉を守る方法もあわせてご覧ください)

② ささやき声に切り替える

静かにしたい場面で、ついささやき声にしていませんか。ささやき声は声帯を閉じきらず、息を漏らしながら出す発声です。喉が乾燥しやすく、負担がかかりやすいとされています。

しかも、ささやき声は子音がはっきりする分、意外と遠くまで届きます。静かなオフィスでひそひそ話が妙に耳につくのは、そのためです。音量を下げたつもりが、かえって目立っているというケースは珍しくありません。

③ 語尾を落とす・早口にする

文の最後だけ小さくする、あるいは早口で流してしまう。どちらも全体の音量は下がりますが、肝心の結論が相手に届かなくなります。

結果として「え、なんて?」と聞き返され、言い直しで余計に響く。声が大きいことを気にするあまり発言自体を控えるようになると、今度は仕事上の機会損失にもつながります。目指すべきは、小さく話すことではありません。

正しい下げ方は、「息の量」だけを変えること

では、どうするか。答えはシンプルで、喉も口も今のまま、送り込む息の量だけを減らします。喉を締めないので声はこもらず、響きが残るため小さくても届く。この状態をつくるのが目標です。

息の量を減らして声量を下げる3ステップ|手のひらテスト・20秒ロングトーン・ハミング

ステップ1 手のひらテストで「吐きすぎ」を知る

手のひらを口の前10cmにかざして、いつもどおり話してみてください。息が強く当たるなら、吐きすぎのサインです。

手にほとんど風を感じない状態で、同じ言葉を言えるように調整します。このとき喉を締めないこと。あくまで「送る息の量」だけを絞ります。これができるだけで、声量は自然に一段下がります。

ステップ2 小さな声のまま20秒伸ばす

息を減らそうとして完全に止めてしまうと、声が震えたり途切れたりします。必要なのは、お腹まわりを軽く保ったまま、少ない息を長く使うことです。

目安は、ひと息で「あー」と小さな声のまま20秒。大きな声で20秒ではなく、小さな声で、です。実は小さい声を安定させるほうが、大きな声を出すより高度な息のコントロールを要します。息の支えについては呼吸法の種類とは?腹式・胸式・混合呼吸を比較もご参照ください。

ステップ3 ハミングで「響き」を足す

声を小さくすると聞き返されるのでは、という不安があるかもしれません。それを解決するのが響きです。

口を閉じて「んー」とハミングし、鼻の付け根から前歯のあたりがムズムズと振動する場所を探します。その振動を保ったまま口を開けて「んーまー」と発声すると、音量は小さいのに、はっきり届く声になります。

声量ではなく響きで届かせる。これが、静かな場所でも聞き返されない話し方の正体です。

音量は「気持ち」ではなく「距離」に置き換える

技術が身についても、会話中ずっと音量を気にし続けるのは不可能です。そこで、意識の持ち方を変えます。

場面別の適切な声量の目安|一対一・会議テーブル・プレゼンの比較

場面ごとに基準を決めておく

「小さめに話そう」という気持ちは、会話に集中した瞬間に消えます。代わりに、相手との距離だけを基準にすると安定します。

  • 隣の席・一対一(1m以内)……その相手ひとりにだけ届く音量
  • 会議テーブル(2〜3m)……一番遠い人にちょうど届く音量
  • プレゼン・広い会場(10m〜)……遠慮なく最大まで

反射が働きにくい環境をつくるのも有効です。響きの強い会議室に入ったら一段下げる、ざわついた店では相手との距離を詰めて音量を上げずに済ませる。音量で押し切るのをやめ、距離と響きで解決するという発想の転換です。

管理するのは、最初の一音目だけ

会話全体の音量は、最初のひと言でほぼ決まります。「おはようございます」「はい、◯◯です」の一音目が大きいと、その後の会話はずっとその音量に引っ張られます。

逆に言えば、意識すべきは最初の1秒だけ。会話の最中ずっと気を張るのは無理でも、話し始めの一音なら誰でも管理できます。電話を取る前に一度だけ、出そうと思った音量の一段下で「はい」と言ってみる。これだけで印象は変わります。

それでも変わらないときに考えられること

ひと通り試しても変化がない場合、発声以外の要因が関わっていることがあります。

たとえば聞こえ方です。自分の声が聞き取りにくければ、脳は音量を上げて補おうとします。片耳だけ聞こえづらい、テレビの音量が家族より大きい、といった心当たりがあれば、一度耳鼻咽喉科で聴力を確認しておくと安心です。また、周囲の音量に合わせる感覚には個人差があり、そこに特性が関わっている場合もあります。

いずれも私たちが診断できる領域ではありませんので、気になる場合は専門の医療機関へご相談ください。ただし、そうした要因がある場合でも、息と響きのコントロールを身につけること自体は有効です。誰にとっても再現できる技術だからです。

逆に、オンラインでだけ「聞こえない」と言われる方へ

対面では問題ないのに、Web会議や電話のときだけ伝わらない——という逆のお悩みは、マイク環境と発声の両面に原因があります。詳しくは対面では普通なのに、オンラインだけダメになる理由で解説しています。

「声が大きい」は、直すべき欠点ではない

ここまで下げ方の話をしてきましたが、最後にいちばん大事なことをお伝えします。

よく通る声は、本来は武器です。広い会場でのプレゼン、多人数の会議、初対面での挨拶。こうした場面では、声が届く人のほうが圧倒的に有利です。マイクなしで最後列まで届く声は、訓練しても簡単には手に入りません。あなたはそれを最初から持っています。

問題なのは音量そのものではなく、場面に応じて上下させる切り替えを、まだ覚えていないことだけ。静かな場面ではすっと引き、勝負どころでは遠慮なく響かせる。その幅を手に入れれば、あなたの声は仕事の場でいちばん強い武器になります。

声そのものが与える印象については、なぜあなたの言葉は届かないのか?でも詳しく触れています。

自己流の限界を感じたら

ここまでの方法で多くの方は変化を感じられますが、ひとつだけ自力では超えにくい壁があります。それは「いま自分の声が、相手にどの音量で届いているか」を自分では判定できないことです。冒頭でお伝えしたとおり、自分の耳には骨導音が混ざるため、基準が必ずズレます。

録音してもある程度しか分かりません。息が多いのか、喉が締まっているのか、響きが足りないのか——原因の切り分けには、外から聴いている第三者の耳が必要です。ここはプロに一度チェックしてもらうのが近道です。

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NAYUTAS六本木校の無料体験レッスンでは、講師があなたの発声を客観的にチェックし、息の量・喉の使い方・響きのどこに原因があるのかをその場でフィードバックします。会議・電話・プレゼンなど、場面ごとの声量の作り分けもお伝えします。六本木駅7番出口より徒歩3分、仕事帰りにも通いやすい駅チカ。社会人の方も多く通われています。

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まとめ

  • 自分の声には骨導音が混ざるため、本人の音量感覚は最初からズレている
  • 声量は「息の量」×「声帯の閉じ具合」で決まる、訓練できる技術
  • 騒音下で声が大きくなるのはロンバール効果。意識では止まらない
  • 喉を締める・ささやく・語尾を落とす、の3つはすべて逆効果
  • 正解は「喉はそのまま、息の量だけ減らす」。手のひらテストで確認できる
  • 小さくても響きがあれば通る。ハミングで共鳴を覚える
  • 音量は距離で決め、管理するのは会話の最初の一音目だけ

「声が大きい」と言われ続けてきた方ほど、声を出すこと自体に少しずつ遠慮が生まれていきます。けれど必要なのは、声を小さくすることではなく、自分で幅をコントロールできるようになることです。まずは次の電話の前に、手のひらを口の前にかざすところから試してみてください。