「えー、それでは僭越ながら、乾杯の……」。マイクの前に立って話し始めたのに、会場の半分はまだ隣の人と話している。もう一度言い直すと、今度は声が裏返る——。
こんにちは、NAYUTAS六本木校です。12月が近づくと、忘年会で乾杯の挨拶を任された方からのご相談が増えてきます。ざわついた会場で声が届かないと、多くの方は「もっと大きな声を出さなければ」と考えます。けれど実際には、通る声に必要なのは大きさより「出だし」と「高さ」です。この記事では、会場を一言で自分のほうに向かせる声の出し方と、30秒で終わる乾杯の挨拶の組み立て方を解説します。
ざわついた会場で声が通らないのは、声量の問題ではない
宴会場のざわめきは、何十人もの話し声が重なってできています。その中で同じような高さ・同じような調子で話し始めると、どれだけ大きな声でも「誰かの話し声のひとつ」として埋もれてしまいます。
通る声 = 大きい声 ではない
通る声とは、周りの雑音と「違う」と耳が判断できる声です。会場の人が顔を上げるのは、音量が上がったときではなく、空気が変わったと感じたとき。その合図になるのが、最初の一言の出し方と、声の高さ・響きです。
周りがうるさいと、人は無意識に声を張り上げてしまいます。この仕組みは自分では普通のつもりなのに「声が大きい」と言われる理由でも解説していますが、張り上げた声は喉が締まって響きが減るため、かえって通らなくなります。
乾杯の挨拶でやりがちな3つの失敗

① 誰も聞いていないうちに、本題を話し始める
マイクを持った瞬間に「えー、本日は……」と話し始めると、最初の数秒は誰にも届きません。会場の人が気づいて顔を上げたときには、もう挨拶の半分が終わっています。最初の一言が消えるのが、乾杯の挨拶でいちばん多い失敗です。
② 声を張り上げて、喉を締めてしまう
届かないと感じて声を大きくすると、喉に力が入り、声がかすれたり裏返ったりします。緊張で呼吸が浅くなっているので、なおさらです。一度裏返ると、そこからさらに力が入る悪循環に入ります。
③ 語尾が下がって、早口になる
緊張すると、早く終わらせたい気持ちから早口になり、文の終わりが小さくなります。特に「乾杯」の直前の「〜をお祈りして」が聞き取れないと、会場はグラスを上げるタイミングを失ってしまいます。
会場を一言で静かにさせる、最初の一言
1. 話し始める前に、3秒黙って会場を見渡す
マイクの前に立ったら、すぐには話しません。背筋を伸ばし、会場の奥まで見渡して3秒待ちます。前に立った人が黙っていると、近くの人から順に「始まる」と気づいて静かになります。この3秒は長く感じますが、会場から見ると自然な間です。
2. 呼びかけは短く、一拍置く
最初の言葉は「皆さん、」の一言だけにして、そこで一拍止めます。「皆さん本日はお忙しいところ……」と続けて話すより、短い呼びかけと沈黙の組み合わせのほうが、ずっと注意を集められます。母音の「あ」「え」をはっきり開けて言うのがコツです。
3. 声の高さを、普段より少しだけ上げる
会場のざわめきの中では、普段の話し声より少しだけ高めの声のほうが、雑音と区別されて耳に届きます。張り上げるのではなく、電話に出るときの「はい」くらいの高さを意識してください。息はお腹から長く吐き、声を会場のいちばん奥の壁に当てるイメージで出します。
乾杯の挨拶は、30秒で組み立てる
乾杯の挨拶は、短いほど喜ばれます。目安は30秒〜1分。次の順番で組み立てれば、原稿を覚えなくても話せます。
| 呼びかけ | 「皆さん、」(一拍)「お疲れさまです。」 |
| 名乗り | 「ご指名いただきました、営業部の〇〇です。」 |
| ねぎらい | 今年を振り返る一言を1文だけ。「今年は〇〇で、本当に皆さんに助けられた一年でした。」 |
| これから | 来年に向けた一言を1文だけ。「来年もこのメンバーで、さらにいい一年にしましょう。」 |
| 準備 | 「それでは、グラスをお持ちください。」(全員が持つまで待つ) |
| 乾杯 | 「皆さんの健康と、来年のさらなる発展を祈って、乾杯!」 |
最後の「乾杯」は、最初の「か」を強く、高めに出します。ここだけは少し大きな声でかまいません。そして、言い終わったら自分が真っ先にグラスを上げてください。動きがあると、声がそろわなくても会場は乾杯のタイミングをつかめます。
マイクがある場合・ない場合

マイクがある場合は、口からこぶし1つ分の距離で、マイクの先を口に向けます。よくあるのが、マイクを胸の前に下げてしまい、声が拾われないケースです。また、マイクがあるからと小声で話すと、こもった声がそのまま大きくなるだけなので、普段の会話より少し張った声を保ちます。
マイクがない場合は、顔を上げて、会場のいちばん奥にいる人に話しかけるつもりで声を出します。下を向いて原稿を読むと、声は床に向かって消えてしまいます。メモを見るなら、見てから顔を上げて話す、を1文ずつくり返してください。
本番までにできる練習
練習は、立ったまま、声に出して、録音するの3つがそろえば十分です。座って黙読しているだけでは、本番の緊張した状態で声がどうなるか分かりません。スマホで録音して聞き返し、最初の「皆さん」と最後の「乾杯」がはっきり聞こえるかを確認しましょう。
緊張で呼吸が浅くなりやすい方は、呼吸法の種類とは?腹式・胸式・混合呼吸を比較、言葉がもつれやすい方は滑舌とは?良くするメリットから改善方法まで詳しく解説もあわせて参考にしてください。

自己流の限界を感じたら
挨拶の内容は自分で考えられても、自分の声が会場でどう聞こえているかは、自分ではなかなか分かりません。録音を聞いても「なんとなく自信がなさそう」と感じるだけで、どこを直せばいいのかまでは判断しにくいものです。
忘年会や結婚式、朝礼のスピーチなど、本番の日程が決まっている方ほど、短期間で外からの指摘を受けるのが近道です。
🥂 乾杯の挨拶、本番前に一度プロに聞いてもらいませんか
NAYUTAS六本木校の無料体験レッスンでは、実際に挨拶を声に出していただき、出だしの高さ・息の使い方・語尾の処理を講師がその場で調整します。完全マンツーマンなので、人前で練習するのが恥ずかしい方も安心です。六本木駅7番出口より徒歩3分、10:00〜22:00営業なので、仕事帰りにも立ち寄れます。
まとめ
- ✓ざわついた会場で通る声は、大きい声ではなく「雑音と違う」と判断できる声
- ✓張り上げると喉が締まり、かえって響きが減って通らなくなる
- ✓話し始める前に3秒黙って会場を見渡すと、自然に静かになる
- ✓最初の呼びかけは「皆さん、」だけにして一拍置く
- ✓声の高さは普段より少しだけ上げ、会場のいちばん奥の壁に当てるイメージで出す
- ✓挨拶は30秒〜1分。ねぎらいと来年への一言は、それぞれ1文だけ
- ✓「乾杯」の「か」を強く高めに出し、自分が真っ先にグラスを上げる
- ✓練習は立ったまま、声に出して、録音して確認する
乾杯の挨拶で求められているのは、立派なスピーチではなく、気持ちよく乾杯できる合図です。まずは今日、立ったまま「皆さん、」と一言、録音してみるところから始めてください。

