こんにちは!NAYUTAS(ナユタス)町田校です。
あなたは音楽を聴いているなかで胸中の景色が変わり、心が躍る感覚に触れたことはありませんか?その秘密は「転調」という技法です。曲の途中でキー(調)を変えることにより、楽曲に新鮮な驚きと感動をもたらします。
クラシックからジャズ、ボサノバ、ポップス、ロック、アニメ音楽まで、ありとあらゆる音楽ジャンルで転調が活用され、聴き者を音楽の冒険の旅へといざなう技法です。
そんな転調の魅力は、曲全体の展開を劇的に変える力にあります。バラードでは感情の高まりを、ポップスやロックでは盛り上がりを、同じメロディが繰り返される曲では、新鮮な印象を加えてくれるでしょう。
転調とは?音楽の重要技法をわかりやすく簡単に
転調とは、楽曲の途中で部分的に調性(キーもしくはトーナリティ)を変える技法です。転調を用いて楽曲に起伏や変化、ダイナミズムなどを与えます。
クラシックからポップスまで幅広く用いられ、ジャンルによってさまざまな効果を発揮するのも転調の特徴のひとつです。転調は楽曲のなかで感情を高め、楽曲のクライマックスをより印象的にします。
特にポップスやロックのバラードでは、曲の盛り上がりを最大化するために、サビでの転調が多いです。転調を使って「これまでと違う」イメージを感じさせ、曲への没入感を高めます。
転調はまた聴き手を飽きさせない工夫としても効果的です。同じメロディーの繰り返しがある曲は単調になりがちなので、転調が新鮮な展開をもたらします。結果として音楽体験が豊かになり、何度も聴きたくなるのです。
転調でキーが変わると歌や曲の風景も変わる
転調の効果を感覚的に表現すれば、楽曲の途中でイメージのなかの風景が変わるような感覚です。曲のなかで変化を与えるのが、転調の主な目的といえるでしょう。
たとえば、林のなかを歩いていたのに、突然視界が開けて海が目の前に広がるような驚き。夜だと思っていたら、急に朝日が差し込んでくるような展開。悲しみの底で希望を見出したときの感動。そういったイメージです。
移調と転調(英語で transposition と modulationn)
転調と混同されやすい「移調」は、似て非なるものです。移調は、曲全体のキーを変える行為で、曲本来のキーから歌手の歌いやすいキー、楽器の演奏しやすいキーに移すことを意味します。
カラオケで、オリジナルキーから歌いやすいキーに変更するのも移調です。一方、転調はあくまで曲の途中でのキー変更であり、ドラマチックな効果を出すのが目的です。
もしサビで転調を使うと、曲が一段と盛り上がり、聴き手の心に強い印象を残せます。サビ以外の部分でも、あたかもスパイスで味変するような効果を出せるのが転調です。
音楽における転調の種類とは
転調は大きく分けると「ピボットモジュレーション」と「ダイレクトモジュレーション」があります。
楽曲の流れを途切れさせずにキーを変えるのがピボットモジュレーション、かたや唐突な転調でインパクトを与えるのがダイレクトモジュレーションで、意図によって使い分けられます。
一方、ダイレクトモジュレーションは、準備なしにいきなりキーを変える大胆な方法です。楽曲のクライマックスを劇的に演出し、強烈な印象を与えられます。
気づかないうちに転調?「ピボットモジュレーション」
具体的には、ピボットモジュレーションは曲の途中で共通するコードを軸に、聴き手が気づかないうちに転調します。
たとえば以下のようなコード進行です。
|C/Dm|G7/C|Bm7♭5/E7|Am/D7|G〜〜
キーの変化の流れを説明します。
1〜2小節めは普通にCキーですが、3小節めのBm7♭5を軸に関係調(同じ音列を持つキー)のAmキーに転調します。
しかし4小節目の後半でD7が響くと、遡ってAmキーのⅠ(トニック)だったAmコードがGキーのⅡm(サブドミナント)の性格を帯び、続くD7コードがGキーのV7(ドミナントセブンス)となってGキーへの転調が確定します。
その結果、5小節めからは自然にGキーとしてのメロディで曲の景色を一変できるのです。この2回の転調はコードの流れを阻害せず、共通のコードが軸となる自然な転調といえるでしょう。
半音上昇でおなじみの転調!「ダイレクトモジュレーション」
前後のコード進行のつながりがあるピボットモジュレーションに対し、ダイレクトモジュレーションは前後のつながりのないコードから、いわば脈絡を無視して転調する手法です。
理屈を通さない分、ダイレクトモジュレーションをおこなうとインパクトが強くなります。
キーの半音上昇などがよく使われますが、そもそも違和感による変化をねらう手法なので、実際はどの程度の上昇下降でも強引に転調できます。
それぞれの与える効果、印象は大きく異なります。ピボットモジュレーションは転調が自然に成立するのが特徴です。楽曲の流れをスムーズに保ちながら、新しい展開を生み出します。
たとえば以下のようなコード進行です。
|C/Am|Dm/G7|C♯/A♯m|D♯m/G♯7|
Cキーで始まった曲が3小節めで、予告なくキーが半音上昇してC♯キーとなり、曲に緊張感を与えます。たとえば、最後のサビのくり返しで使われるケースが多いです。
転調のある楽曲の歌唱や演奏を上達するには、NAYUTAS(ナユタス)町田校でのレッスンが役立ちますよ!
ビートルズ初期の名曲における絶妙な転調のやり方の例
ビートルズの名曲「If I Fell(邦題:恋に落ちたら)」は、アルバム『ハード・デイズ・ナイト』に収録され、ジョン・レノンが手掛けたとされる初期の代表的な作品のひとつです。
彼らの初主演映画『A Hard Day’s Night』(邦題:「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ! ヤァ!」)のために作曲されたこの曲は、詩情豊かで美しいメロディとハーモニーが特徴で、ビートルズファンだけでなく多くの音楽好きに愛されています。
この曲の音楽的に特筆すべき点は、非常に複雑な転調を含みつつも、それを不自然に感じさせない不思議かつ美しい、絶妙なコード進行といえるでしょう。
この曲の冒頭部分は「不安」を感じさせるメランコリックなメロディで始まり、その後穏やかなメロディに移行し、やがて「希望」を予感させる明るいメロディへと展開します。
こうした感情の流れを想わせるコード進行は歌詞の内容と見事に呼応し、最後には力強くも美しいハーモニーが広がります。ジョージ・ハリスンが弾くリッケンバッカーの12弦ギターが持つ柔らかな響きも、曲の雰囲気を支えています。
ジョン・レノンの情感あふれるボーカルに、ポール・マッカートニーが息の合ったハーモニーを重ね、心に深く響くサウンドを生み出している点も魅力です。
この曲はコード進行だけ見ると一見複雑ですが、聴く分には非常に自然で美しい流れを持っています。
不思議で美しいコード進行(ギターやピアノで弾いてみよう!)
「If I Fell」の冒頭の8小節は不思議かつ美しく、音楽理論上で非常に興味深いコード進行です。
|E♭m/E♭m|D/D|D♭/D♭| B♭m/B♭m|E♭m/E♭m |D/D|Em/Em|A7/A7|
この進行は一見奇妙ですが、実際には緻密な転調が含まれています。最初の1〜4小節ではD♭コードがⅠ(トニック)となり、各コードの機能は以下のように解釈できます。
|E♭m/E♭m|D/D|D♭/D♭| B♭m/B♭m|
Key=D♭
E♭m:IIm(サブドミナント)
D :II♭ (ドミナント代理)
D♭:I (トニック)
B♭m:Ⅵ (トニック)
この進行で特に注目すべきは、Dコードがドミナント代理として使われる点です。
音楽の豆知識1 〜ドミナント代理とは〜
ドミナント代理とはドミナントコード(最も強い終止感を伴って解決させるコード)に近い役割を果たす、トニックの半音上のコードで「代理コード」や「裏コード」とも呼ばれます。
本来この流れなら、トニックであるD♭コードに対するドミナントコードのA♭7を持ってくるのが自然です。ベースラインもⅡ度→Ⅴ度と移り、自然なツー・ファイブ(II-V)が形成されます。
音楽の豆知識2 〜ツー・ファイブとは〜
ツー・ファイブ(II-V)とはI (トニック)に帰結する最も自然なコードの流れ、あらゆる音楽の根幹的な要素です。
ここでのDコードは通常ならA♭7コードが担うべき、D♭コードに帰結するドミナントコードの代役を果たすだけではありません。
その後の展開で出てくる半音上昇の転調先、Dキーのトニック機能も持っています。これは結果的に、後に起こる転調の「伏線」が張られているようなものです。
本来ここで代理コードを使う場合、D♭コードにセブンス音(短7度)を付加したD♭7が正攻法であるにもかかわらず、セブンスは付加されていない点が伏線です。
(伏線をどのように回収するのかは、後ほど「伏線回収のからくりとは?」で明らかになります。)
通常の代理コードでは、セブンス音があることによりトライトーン(3全音)がコードのなかに存在します。そのセブンス音の役目は、セブンス(C音)とコード内のG♭でトライトーン(3全音)を形成することです。
代理コードはトニックのコード音に帰結するトライトーンを含むので、ドミナント機能を代理しやすくなります。
音楽の豆知識3 〜トライトーン(3全音)とは〜
トライトーンとは3全音の開きで、調和した完全5度プラス半音、もしくは6半音の音程です。もっとも不安定な音程で、その不安定さから「悪魔の音程」とも呼ばれています。
不安定さゆえに安定した音程に落ち着きたくなる性質を持ち、ドミナントの機能を生み出す要素です。
V7のコードはトライトーンが含まれ(長3度と短7度)、ルート(根音)がトニックに対して(自然な音の流れを感じさせる)完全5度の開きがあるのと相まって、もっともトニックに戻りやすいコードとなります。
「If I Fell」の2小節めおよび6小節めのDコードは、セブンス音がないのでトライトーン(3全音)は含まれず、トニックに帰結しようとする性質が若干薄れます。とはいえ、ドミナント機能がなくなるわけでもありません。
いつ起こったかわからない転調の秘密
さて、ここまでは代理コードの構成音と呼応してメロディが部分的に半音変化する以外はノーマルな流れです。5〜8小節のコード機能を解釈すると、途中でキーが半音上のDに変わるのがわかります。
|E♭m/E♭m |D/D|Em/Em|A7/A7|
Key=D♭
E♭m:IIm(サブドミナント)
D :II♭ (ドミナント代理であると同時にDキーのトニックで、この時点から転調)
Key=D
Em:IIm(サブドミナント)
A7:Ⅴ7 (ドミナント)
5小節めのDコードは2小節めのDコードと同じく、この時点ではD♭コードに帰結するドミナント代理として響きます。ところが次に来るコードは、半音上のDキーのサブドミナントに当たるEmコードです。
この時点で先に鳴ったDコードとの関係でDキーへの転調が確定します。
ここで重要なポイントは、コードの機能は単にその構成音だけで決まるものではなく、楽曲のコンテクスト(文脈)のなかで意味を持ち、役目を帯びてくるという点です。
「If I Fell」のここで取り上げた例では、7小節めにEmコードが鳴った時点で、「遡って」直前のDコードにDキーのトニック機能が生まれ、曲の流れのなかで半音上昇の転調が確定します。
一般的に半音上昇する転調はよく使われ、ビートルズの同時期でいえば「And I Love Her」などで使われています。
キーの半音上昇による転調の特徴とそれを逆手に取る
半音上昇の転調には多くの場合に、次の2つの特徴があります。
- 楽曲が盛り上がってからおこなわれる
- 唐突にキーが上がるので転調が歴然とわかる
ビートルズの「And I Love Her」には、これらが両方当てはまります。ところが「If I Fell」はどちらも当てはまりません。
「If I Fell」における半音上昇の転調は、曲が盛り上がる前におこなわれ、しかも前述のとおり半音上がったという印象を与えないという稀有な半音上昇転調です。
実はこの転調、ピボットモジュレーションとダイレクトモジュレーションが合わさった高度な転調といえます。
伏線回収のからくりとは?
Dコードが軸となって転調しますが、通常軸となるのは転調前のキー内のコードであるのに対してこのDコードは、まさかの代理コードです。
1回めのDコードはドミナント代理として働き、2回めは当初同じように響きつつ、次の(Emコードが鳴る)瞬間にDキーのトニックとなって前述の伏線を回収します。
この伏線回収を可能にするのは、ドミナント代理が通常持っているセブンス音(短7度)がないので音が濁らず、トニックに変わった時も綺麗で違和感がないという音の性質です。
もしトニックにセブンス音が混じっていたとしたら、トニックになりえてもブルースのような気怠いイメージに移行してしまうでしょう。その事態を「If I Fell」ではセブンス音の省略によって、なんなく免れています。
ジョン・レノンはそこをねらったのか、それとも感覚で?
この凝った技により、聴く者はそもそもキーが変わったことすら意識せず、メランコリーな雰囲気から情緒あふれる力強い流れを感じ、あとはただ美しいハーモニーとメロディにうっとりさせられるのみです。
ジョン・レノンは音楽理論を理解した上で、ねらってセブンス音の省略によってコードの性格をあいまいにし、ドミナントとトニックのいずれにもなりえる流れを作ったのでしょうか?
あるいは音楽理論など考えず、「こうするとカッコいい!」というように、感覚でそれをなしとげたのか?
彼の心のうちは、今となっては誰も知りえません。ただし、ねらってそうしたなら極めて高度、感覚でおこなったならすさまじい音楽センスの良さ、いずれにしても素晴らしい才能といえるでしょう。
J-POPにおける転調が効果的な楽曲の例
身近なJ-POPにおける、転調が効果的な楽曲をいくつかご紹介します。
Omoinotakeの「幾億光年」では、AメロからBメロ、そしてサビへの転調が自然な流れでおこなわれ、楽曲全体がドラマチックに仕上がっています。聴き手に新たな展開を提供し、楽曲のストーリー性を高めているのです。
Official髭男dismの「Cry Baby」は、転調が頻繁におこなわれる曲として有名です。この楽曲では10回以上の転調がおこなわれ、聴く者を感情のジェットコースターに乗せます。
Aメロからサビ、さらにはブリッジに至るまで、あらゆる箇所でキーが変わり、緊張感と躍動感を生み出しているのです。
Mrs. GREEN APPLEの代表的な楽曲「ライラック」では、印象的な転調がおこなわれています。感情の高まりを象徴する転調が、曲全体に活気を与えている楽曲です。
とりわけラストのサビの転調は聴き手の心を揺さぶり、クライマックスに向けて一層の盛り上がりを演出します。
バラードでは、転調が特に感情的な高まりを演出するために使われます。Superflyの「愛をこめて花束を」でも、最後のサビでの転調が大きな効果を発揮し、強い印象を残すのです。
聴き手は音楽とともに感情の旅にいざなわれ、その瞬間ごとの感動を味わいます。
Mr.Childrenの「抱きしめたい」は、ミスチルファンのなかでも極めて人気が高い曲で、バラードにおける転調の代表例です。
この曲ではイントロから歌い出しへの転調、そしてサビに向かう転調が巧みにおこなわれ、感情の流れが自然に盛り上がります。曲全体のなかで何度も転調がおこなわれ、曲に豊かな色彩感を与えている点も秀逸です。
まとめ
転調は、音楽に多彩な表現と感動をもたらす重要な技法です。クライマックスで感情を最大限に高めたり、単調になりがちなメロディに変化をつけたり、その効果は多岐にわたります。
ポップスからジャズ、ロック、クラシックまであらゆるジャンルで活用され、聴く者の心を動かすのが転調です。そんな転調のある楽曲の歌唱や演奏の上達を、NAYUTAS(ナユタス)町田校でのレッスンが後押しします。
音楽制作を志す人も音楽を聴いて楽しむ人も、転調を理解すればまた違う角度から音楽を味わえるでしょう。
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